第5回 酒井勝隆
くまのプーさん
私にとっての中部高校コーラス部は、いったい何者だったのか。なにものでもな い。「くまのプーさん」だ。たぶん、わかるひとしかわかるまい。なあ、堀田航洋、 大重健太郎、そして、永田荘太郎!あっ、寺西も。言わずとしれた、私が中部高校 コーラス部に引きずり込んだ連中である。しかしそれが功を奏したのはいうまでも ないだろう。(はっはっはー)
と、冗談はさておき、これはこれから始まるくまのプーさん物語の序章でしかな い。思い出してくれ。入学式のあの貧相なコーラス部の歌声を・・・でも、まだあれ ならよかった。みためは、30人前後に見えた。実際音楽室に足を運ぶとそこには閑 散とした風景が。ぐあーんと頭を金槌でうちつけられたようだった。入学式のあのメ ンバーのほとんどが助っ人だったのだ。なんとかして、このコーラス部を立て直さね ば!そこに、3人の戦士がたちあがった。私と大重と、そしてかの魔王堀田指揮者大 臣だ。(なお、この物語は半フィクションですので決して歴代先輩方を侮辱する物で はありません。)まず、戦士たちにたちはばかった障害は、国民文化祭だ。この、 コーラス部に足りないもの、それはやる気。やる気を強制的に引き出す物、それはコ ンクール!ということで、甘いマスク「芹川」に何度も強くアタックした。 しかし、国民文化祭の圧力はすざまじかった。そして、芹川に とどめの一発「不敵な笑み」を くらい、我々はダウンした。そして、コンサートが終わり (寒いコンサートだったな・・・。)、激寒の時代が到来した。「チュース!」、い きよいよく音楽室のドアをあけた私。しかし、そこに待ち受けていたのは、「あれ、 酒井 今日練習これじゃできないね」と苦笑いしている芹川だった!!!うちの部は、冬に なると変なウィルスが蔓延してしまう。それに次々とみんな餌食になってしまった。 私も それに悩まされた。
次の年、私たちは新入生の入部を心待ちにしていた。特に男子の。しかしそれは裏 切られた。男なんて、1人しか 入部しなかった。しかし、我々はくよくよしてはいられなかった。NHK音楽コンクー ルに出ねば。このたるんだコーラス部に喝を入れねば。コンサート出場についての全 体会議が開かれた。なかには、とんでもないいいわけをして反対してる奴らもいた。 コンクールに出れば、技術重視になる、楽しくなくなる。コンサートに力をいれた い。なんだそれ、やるきあんのか!と思いつつ3戦士は堪え忍んだ。だって、そうい う奴らに限って練習に出てこない怠け者だったのだ。やつらのことだ。本心は(だや いなあ・・。めんどい。)とかだろう。なにはともあれ、コンクールに出ることはで きた。(まあ、技術面は抜きにして)。銀賞だった。大重健太郎のさえない顔を今で も覚えている。自分たちのしている合唱がどの程度だったか、客観的にみれた いい機会だったと思う。コンサートはたしかに、楽しければいいかもしれない。で も、合唱をやる以上ある程度の合唱を作り上げないといけないと思う。
僕は、現在筑波大学混声合唱団に所属している。その合唱団は、コンクールにはで ない。最初、「えっ」と思ったけど、それは一瞬でうち消されたのであった。なぜ か。それは、まず、合唱団としてのいわゆる「うまさ」が、コンクール全国大会にで てもおかしくないほどすぐれていたこと。しかも、合唱団全員が大人びていた。時間 を守り、学生指揮者の練習もつねにきびきびしており、さぼる人がまずいない。みん な、「うた」っている。曲を歌っているのだ。それが、一つのハーモニーになると き、自然と涙が出るのだろう。事実、ぼくはまだ、その定演に出てないから よくわからないが、定演のクライマックスになると涙流す人が少なくないらしい。こ れこそ、僕が追い求めていたコーラスだと思った。コンクールなどは、大学生には必 要ない。好きで歌いたい奴らが集まって、心を込めて歌うことが最高のコーラスなの だと。(でも、勘違いしないでほしい。筑波混声合唱団も、しっかり騒ぐときはさわ ぎます。ていうか、しょっちゅう騒ぎます。) 話は戻り、高校三年になり、大重が倒れた。非ホジキン病という、とにかく悪性の 病気にやられた。非常にショックだったが、とにかくコンクールに出た。コンサー ト、コンクール、忙しい日々だったが、金賞まで取ることができた。もはや、私は賞 にはこだわっていなかった。なかには くやしい、と思う人もいたし、最高にうれしいという人も いた。いつのまにか、我々は成長していたのだ。合唱にうちこむ、素直に「うたう」 ということが少しみえた、コンクールでの金賞だったと思う。そして、僕は第二ス テージ として、筑波ですばらしい合唱に巡り会えた。みんなは、 どうなのかな。そして、僕らに続いて後輩たちも、この合唱でついて熱く青春してほ しい。おおいに、コンサート、コンクールを活用してほしい。そして、私はOBとして 精一杯サポートしていきたい。
現役のみなさん、中部高校という圧力に負けず、素晴らしいコンサートをしてくだ さい。応援に行きます。そして コンクールも楽しみにしています。
酒井勝隆
1995年4月〜1999年3月在籍。
現在筑波大学混声合唱団に所属